音楽に携わる仕事につきたいのですが…

音楽に携わる仕事につきたいと思っていますが、自分が何に向いているのかわかりません(何を目指せばよいのかわかりません)。

(音大ピアノ科2年:海)

自分が何に向いているかは、わからないもの

 この質問は、よく受けることがあります。やはりこれまでひたすら音楽を学んできて、大学卒業後を「さあ、どうするの?」と言われれば戸惑いますよね。学んできたのが音楽だから「音楽に携わる仕事につきたい」とのお気持ちも当然だと思います。
 では「音楽に携わる仕事」にはどんなものがあるでしょうか?
 直接イメージしやすいのは演奏家や伴奏ピアニスト、音楽教室講師のような組織に属さない、個人としての活動です(楽器店などの音楽教室講師には社員はほとんどおらず、講師個人が教室と「楽器を教える」契約を結んでいます)。それ以外では、楽器店の販売員、音楽事務所・CDレーベルの社員、オーケストラ事務局職員、アートマネジメント関係などでしょうか。
 このうち他大生に比べ、音大生に優位性がある仕事はどれでしょう? じつは後者のほとんどは、音大生だからといって優位性があるとは限らない仕事です。昨年度(2016年3月卒)ある大手楽器店の内定者は全員音大生以外でしたし、音楽事務所・CDレーベルの社員やオーケストラ事務局職員で必要とされる人材は、海外から演奏家を招聘する際に英語で交渉できたり、法律の知識があって出演契約書を作成できたりする人です。おカネを扱い、会社として決算も行いますので会計の知識も必要ですね。このように、後者は確かに「音楽に携わる仕事」ではあるのですが、その仕事の大半は、音楽以外のスキルや知識が必要です。そこはぜひ押さえておいていただきたいポイントです(アートマネジメント関係や楽譜出版社の求人の多くは既卒や契約社員です)。
 さて、ここでよく考えてみましょう。
 みなさんは、そもそもなぜ音楽大学に入ったのでしょうか。「音楽が好きだから」「もっと音楽を深く学びたいから」「演奏家になりたいから」……人によって、その理由はさまざまです。あなたはどうして音大に入りましたか? まだ2年生ですから、その時の気持ちを大切にして、まずは音楽に精一杯取り組んでみてはいかがでしょうか。そうすると、その先に見えてくるものが出てくるかもしれません。
 「自分が何に向いているのかわからない」――これは誰しも思うことです。私だって大学時代は同じように思ったものです。でも、何に向いているかを考えるより、やりがいのあるものを見出して、それにチャレンジする方が気持ち的にも楽なのではないでしょうか。人間の適応力というのは相当なものですから、向いていなくても歯を食いしばっていると、そのうちその仕事が自分に合っていると感じることがあります。
 これは私自身の経験でもあります。銀行に入って実際に仕事をするようになってから、「この仕事向いてない、しまった!」と思いました。特に最初の3年くらいは毎日思っていました。でも30年経って今振り返ると、「結構向いていたのかも」と思っています(笑)。

(2016.10.11)

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