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舟橋 三十子(ふなはし・みとこ)
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院音楽研究科修了。日本大学芸術学部講師を経て、現在、名古屋芸術大学大学院教授。作曲を池内友次郎、矢代秋雄、三善晃、永冨正之の諸氏に師事。ピアノを小林仁、舘野泉の諸氏に師事。
著書に『はじめてのソルフェージュ』全5巻、『ミュージック・トレーニング』全2巻(以上、全音楽譜出版社)、『クラシックの聴き方入門――名曲のスタイル分析 全80曲』『クラシックのからくり〜「かたち」で読み解く楽曲の仕組み〜』(以上、ヤマハミュージックメディア)、訳書にエドウィン・スミス、デービット・レヌーフ著〔オックスフォード・ミュージック・ワークブック〕『音楽の基礎練習』全3巻(カワイ出版)、ミシェル=オディル・ジロー著『シューベルトを歌いながら学ぼう』全3巻、『モーツァルトを歌いながら学ぼう』全2巻、『シューマンを歌いながら学ぼう』全4巻、ジャン・ピエール・クーロ著『音楽家への第一歩』全8巻(以上、パリ・A. ルデュック社)等がある。
「フォルマシオン・ミュジカル」ホームページ
http://www.formationmusicale.net/

舟橋 三十子

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第04回
2013年度 奈良教育大学教育学部入試問題より

P. Tschaikowsky作曲 ピアノ協奏曲op.23第1楽章

(実際の入試問題と解答・解説は、音楽之友社『音楽大学 短大・高校 音楽科入試問題集2013』 170〜172ページ参照。)

I 入試問題解説
(1)移調楽器について
 楽譜に書かれている音(記譜音)と実際の音(実音)が異なる楽器のことを「移調楽器」と呼びます。

 上記のチャイコフスキーの問題4の(4)では、B♭管のクラリネットの旋律を実音で書くように指示されています。クラリネットは木管楽器で、B♭管、A管、E♭管の楽器がありますが、一般的にはB♭管がよく用いられます。楽譜にはin B♭、in A、in E♭と表記されます。

 譜例1の楽譜(記譜音)を
●B♭管で演奏すると、譜例2のようになり、実音が記譜音より長2度低くなります。
●A管で演奏すると、譜例3のようになり、実音が記譜音より短3度低くなります。
●E♭管で演奏すると、譜例4のようになり、実音が記譜音より短3度高くなります。

譜例1 記譜音

フランスの童謡《クラリネットをこわしちゃった》

譜例2 B♭管の実音


譜例3 A管の実音


譜例4 E♭管の実音


 次の曲は、B♭管のクラリネットを効果的に使った作品の冒頭です。

ガーシュウィン作曲《ラプソディー・イン・ブルー》

 クラリネット以外の代表的な移調楽器としては、サクソフォーン、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ等があります。ただし、トロンボーンとチューバは一般的には実音で表記されます。

(2)オーケストラの楽器編成
 オーケストラで使用される楽器は、大きく分けて弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器の4つに分類されます。

 木管楽器は、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの4種類が使われます。フルートはピッコロ、オーボエはイングリッシュ・ホルン(コール・アングレ)、クラリネットはバス・クラリネット、ファゴットはコントラファゴットというように、音域の異なる同属楽器を持ち替えて演奏することがあります。

 金管楽器は、ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバの4種類が使われます。トロンボーンは一般的に3本セットで使われ、その内の1本はバス・トロンボーンを用います。

 弦楽器は、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの4種類が使われます。

 打楽器は、ティンパニ、小太鼓、大太鼓、ドラム、シンバル、トライアングル、カスタネットなどが使われます。シロフォン、ビブラフォン、グロッケンシュピール、タムタム、タンバリン等も、曲によっては用いられます。

 木管楽器のサクソフォーンや金管楽器のユーフォニアムは、通常のオーケストラ編成では用いられません。
 その他、作品によっては、ハープ、チェレスタ、チェンバロ、オルガン、ピアノ等の楽器も使用される場合があります。

II 応用問題
(1)移調楽器
 次のB♭管、A管、E♭管で書かれた作品の旋律を、実音に書き直しましょう。
 a)〜f)の各曲の下の五線は、解答欄として適宜お使いください。

a) B♭管(クラリネット)

リムスキー=コルサコフ作曲 交響組曲《シェエラザード》第3楽章〈若い王子と王女〉より


b) B♭管(トランペット)

マーラー作曲 交響曲第5番 第1楽章より


c) A管(クラリネット)

ワーグナー作曲 歌劇《タンホイザー》序曲より


d) A管(トランペット)

ヨハン・シュトラウスⅠ世作曲《ラデツキー行進曲》より


e) E♭管(クラリネット)

ラヴェル作曲《ボレロ》より


f) E♭管(トランペット)

ハイドン作曲 トランペット協奏曲 第1楽章より


(2)オーケストラの楽器
 次の楽器の一般的な音域を、A〜Eの譜例から選び、[ ]の中にアルファベットを書きましょう。

g) フルート [ ]
h) ヴァイオリン [ ]
i) ピアノ [ ]


A 

B 

C 

D 

E 

解答
(1)
※解答は全て調号を用いずに表記してあります。
a) 

b) 

c) 

d) 

e) 

f) 

(2)

g) [E]
h) [C]
i) [B]

★音楽之友社『名曲で学ぶ音楽の基礎 I 』69〜73ページに、チャイコフスキーの作品、22ページの問題3、49ページの問題2、72ページの問題8、76ページの問題4、82ページの問題9に、移調楽器としてのクラリネットを用いたフォルマシオン・ミュジカルの問題が載っていますので、参考にしてください。

ご紹介した本
音楽大学・短大・高校音楽科入試問題集 2013年度

音楽大学・短大・高校音楽科入試問題集 2013年度
音楽之友社 編

2014年度入試を受験する音大・短大・音高志願者のための過去問集。編集部の依頼に応じて公表された国公立大学32、私立大学30、短期大学12、高等学校51校の2013年度入試問題を一挙掲載。楽典や聴音・視唱課題、和声や作曲課題のほか、即興や伴奏付け、難関校の国語、英語、小論文までを網羅。『音楽大学・学校案内2014年度』に発表が間に合わなかった、東京藝大、愛知県芸大、京都市立芸大、東京都立総合芸術高、桐朋女子高、京都市立京都堀川音楽高など、主要校の2014年度課題曲も併せて収載する。巻頭特集「入試の疑問、不安を解消します! ここが知りたい! 音大入試Q&A」〈管楽器専攻編〉では、主要私立大学8校で実際に実技試験の試験官を務めた経験をもつ先生方にインタビュー。

フォルマシオン・ミュジカル 名曲で学ぶ音楽の基礎 II 楽典・ソルフェージュから音楽史まで

フォルマシオン・ミュジカル 名曲で学ぶ音楽の基礎 I 楽典・ソルフェージュから音楽史まで
舟橋三十子 著

フランスで行われている、名曲やよく知られた曲をテキストにして、音楽を多角的な面から考え、真の音楽家が身につけるべき広い教養と高い音楽性や創造性を目指す学習方法――この考え方は“フォルマシオン・ミュジカル” (Formation Musicale)と呼ばれている。本書は、フォルマシオン・ミュジカルを今の日本の現状に合わせて、幅広い視点から音楽を捉えるという考え方に基づいて構成された問題集。全2巻。Iは初級。
「ソルフェージュ」「楽典」「楽式」「和声」「音楽史」など、音楽に必要な基本が身に付く。さらに発展した知識と教養を身に付けるために、各曲(章)の終わりに「コラム」を設けた。オーケストラ、ピアノ曲を中心に、声楽・合唱、室内楽、協奏曲も収載。

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