神楽坂通信

宇野功芳先生旅立つ

6月10日(金)の午後9時14分、合唱指揮者、そして音楽評論家として、業界になくてはならない重鎮的存在の宇野功芳先生がこの世を去った。86歳だった。
 あまりにもあっけなく、しかし自分の人生を全うしての終焉を迎えたことは見事と言うしかない。
 先生と弊社との重厚な結びつきは、先生の言葉を借りると“音楽之友社に来ると妙に落ち着き、気持ちが明るくなる”と語っていたことからも、ご想像いただけるかもしれない。
 月刊誌「レコード芸術」では、新譜月評を1963年からご担当していただき、歯に衣を着せない鋭い論評で、業界に活を入れていただいた。ただ、ご本人は音楽評論家というより、合唱指揮者としての強い思いがあり、最近は“文章は書きたいことを十分書いた。僕は合唱の指揮者としてもっと認知してもらいたい!”と述べていた。
 弊社では近年、先生の永遠の師匠(?)であった指揮者ブルーノ・ワルターに焦点を当てたONTOMO MOOK「宇野功芳編集長の本 没後50年記念 ブルーノ・ワルター」(2012年2月刊行)をはじめ、感動する音楽の原点を追求する山之内正氏との共著「目指せ!耳の達人〜クラシック音楽7つの“聴点”〜」(2013年5月刊行)、演奏の根源を10名の音楽関係者と対談で綴る「演奏の本質」(2015年3月刊行)と、次々と精力的に音楽の真を問う企画をONTOMO MOOKで出している。
 そして、集大成的企画ともいえるONTOMO MOOK「宇野功芳の軌跡」の、2016年中の刊行に向けて、制作している最中の訃報であった。唖然、茫然、困惑、落胆、失望、無念。どれもが入り乱れているのが、私たち共通の思いであろう。先生は“私はその(企画の)ためにやるべきことは全てやりましたよ、この3ヶ月で。後はあなた方がしっかりと描いて完成してください!”とでも言い残したように、この世を去って行かれたのでは……。まさに見事な立ち振る舞い。2月から5月の10回に及ぶ取材を含めた話し合いは、先生と編集者たちとの、新たな発見と創作意欲を生み出す濃厚な時間であった。どこにもない、これぞ等身大の「宇野功芳の軌跡」が見えてきた途端の死。それはあまりにもドラマチック過ぎるといってよいだろう。

音楽之友社


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